ライフデザインと支援シート

2015年8月23日
講演会「発達障害について学ぶ-発達障害の子どもの自己をどのように支えるか-」を開催

8月23日(日)豊川市勤労福祉会館において、平成27年度文部科学省委託事業「発達障害に関する教職員育成プログラム開発事業」の一環で講演会「発達障害について学ぶ-発達障害の子どもの自己をどのように支えるか-」が開催されました。本学教育臨床学講座 原田宗忠講師からの挨拶および趣旨説明が行われたのち、島根大学教育学部 心理・発達臨床講座 野口寿一先生による講演、原田宗忠講師による研究調査報告がなされました。
参加者は、教育委員会・学校教職員、大学院生、他大学学生など61名。質疑の際やアンケート記述を通して、多くの方々から、児童生徒の心の世界を新たな視点で捉えなおすことができたといったご意見や、本講演会内容をふまえた学校現場における課題意識に関するご意見などを頂くことができました。講演会および研究調査報告の概要は以下のとおりです。

 

1.「発達障害について学ぶ-発達障害の子どもの自己をどのように支えるか-」
   :島根大学教育学部 心理・発達臨床講座 講師 野口寿一先生

野口講師からは、まず、部分が隠された画像提示や絵画配列課題に取り組む体験などを通して、情報の少なさを主観的な想像力で補って状況を理解しようとする人間の傾向についての話題提供がなされました。その後、認知特性によって注意が向く情報の範囲が狭くなってしまうタイプの発達障害のご説明や、先行研究のご紹介等を通して、発達障害傾向のある方の適応への努力や苦労、他者との間で感じる異質感や苦しみについてお話しがなされました。最後に、発達障害の傾向のある方を支える際の重要な視点として、①他者・世界との接点を支える、②「自己」の芯へのまなざし、という2つの視点をご教示くださいました。

 

2.「発達障害の可能性のある児童・生徒への支援に関する調査報告」
   :愛知教育大学 教育臨床学講座 講師 原田宗忠

原田講師からは2つの調査研究の報告がなされました。

  • ①発達障害の可能性のある児童・発達障害の入り口支援時の教員の関わりの実態把握を目的としたアンケート調査報告

  • ②医療機関と学校との間でどのような連携があるとよいかを医療機関側の視点から把握することを目的としたインタビュー調査報告

①では、入り口支援にあたって、教員が保護者との信頼関係を丁寧に作っている様子、保護者の気持ちに配慮した上で話すタイミングや話す内容などを検討しながら関わりを行っている実態がうかびあがりました。これらの実態を踏まえ、中・長期的に続く支援過程の中で、どのように保護者の思いを理解し、話し合いの過程の中でお互いの歩調を合わせていくかが、今後の課題としてあがりました。
②では、医療機関における見立てや見通しの検討や医療的支援の実施にあたって、学校からの医療機関通院までの経過・経緯や学校での様子の情報が有効に活用される可能性があることが明らかになりました。また、今後の検討課題として、医療と学校との間での連携方法や連携内容があがりました。

 

3.参加者の声および今後の課題

参加者アンケートでは、学校現場における教師としての現実的関わりに関する振り返りや再確認となったというご意見や、時間をかけて支援していくことの必要性の認識の機会となったというご意見、「短時間で効果的な対応」の必要性やその具体的方法をより学びたいといったご意見などがみられました。また、講演会、調査報告、質疑・応答からは、今後の課題として、スクールカウンセラーを含めた教職員間での連携の仕方や医教連携の方法についての検討、中学校卒業後の教育・医療・福祉支援の充実等があげられました。

 


(報告:愛知教育大学教育臨床学講座 講師 原田宗忠)